建仁寺垣作成解説
(実習を通しての作成のコツのコツ)
1. 作成の目的
建仁寺垣作成方法についてセンタ主催で渡辺政満さんを講師として実習が平成20年1月10日および11日の2日間に亘って行われた。
今回の実習は限られた人数で行われたため、参加出来なかった人たちが大勢います。
また今回は、特に一重垣の作成のみならず、普段経験することが少ない二重垣も作成、同時に二つのタイプの建仁寺垣の作成を一回で体験出来る貴重な実習を行った。
この資料は二つのタイプの建仁寺垣の貴重な経験を実習記録として作成し、参加出来なかった人達にその作成手順とそのコツの普及を目的としまた、参加した人達の忘備録として役立て、更に最近の工法をも加味し作成したものである。
2. 建仁寺垣実習の対象と完成状況
完成図を示すと下の写真のように、L字型の一方が一重建仁寺垣、他方は合わせ建仁寺垣(以下二重垣と記述)として作成している。
表面
左側が二重、右側が一重
裏面
左側が一重、右側が二重
以下の事項は特に今回の実習とは関係ないが、本資料で引用する場合もあることから、必要事項のみを記述する。
@ お客様の要望確認
・垣根の種類、規模等を確認し、竹とプラスチックのコスト・耐用年数、又竹の場合の最適時期と作業時期についてもお客様と意見交換する。
A 設置場所の環境調査
・ 規模(大きさ寸法)、設置場所についてお客様の要望を基に、その条件で設置上の支障となる、特に下水・電気等の配管の有無をお客様立会いの下で確認する。
・ また用壁や樹木等の根が作業の支障にならないかを確認する。
・ その上でお客様と最終的な設置条件(大きさ、高さ、設置場所の位置等)を確認する。
B 図面の作成
・ 正確な図面作成はともかく、最低限の簡易図面を作成し、作成条件も併せて記述する。
・ 予定価格を算出する。
・ シルバーは営業経費や諸経費を見ていないため、お客様との現地調査や調整稼動、材料仕入れ等の稼動も算入する。
C お客様との確認
図面を基にお客様に説明するとともに、予定価格を示しながら最終調整と確認を行う
また必要に応じ修正も行う。
4. 作成手順
4.1 柱・竹の清掃
@柱の表面の清掃
今回は焼柱を使用したので、手が汚れを防ぎ、墨入れ(鉛筆等でのマーキング)等の作業を容易にするため焼けた表面をブラシ(金ブラシ)等で清掃する。
焼柱は墨入れや鉛筆等のマーキングが殆んど見えず、作業性が悪い。そのため防腐処理の柱の方が良い。(なお焼柱は予め材料を購入する時に販売店に依頼する。ただしコストは高い)
A竹の表面の清掃
竹の表面の泥などの汚れや竹自身の白粉などを濡れ雑巾、タワシ(縄を捩ったも)
等でふき取り清掃する。
柱の焼きの清掃 竹の水洗い
水を扱う作業なので、手荒れを防ぐため防水性の有る手袋を用意する。これは水に予め浸し、水を含んだシュロ縄で男結びを行う場合も必要なので必ず用意する
5. 柱の寸法取り(マーキング)
図面を基にマーキングを行う。今回二重建仁寺の忍びを差し込む穴を穿つための中心線を出すため墨み入れを行う。
・柱の末口、元口に注意する。末口は上にする。
・マーキングは墨汁による墨み入れまたは鉛筆、見えない場合は白墨、またはノコギリで簡単なノコ目を入れる等も工夫する。
柱の中心線がずれていると、立子表面全体の捩れの原因となるので注意する。
・ 立子の長さは予め納入時に切断されているが、その寸法とマーキングがあっているかも確認する。
・ 穴を穿つ場合は、作業性を高めるため、ノミだけでは無く、木工用ドリルで穴を開け、ノミ使いが軽くて済むように工夫する。
寸法取りとマーキング 中心線の墨入れ
穴空け 穴明け後
作業は複数人で共同で確認しながら作業を行いようにし、単独での作業は避ける。作業の効率も向上し、特に間違いを防ぐためにもマーキングや切断作業などは、最低二人で確認し納得しながら行うと良い。
柱の穴を掘る場合、木の根やコンクリート、石など思いがけない障害物に遭遇する可能性があるので充分な時間的余裕を見る。
特に用具については、穴掘器・ツキ棒等は当然なこととして、大きな金梃子、玄能、ト
ンビ、木の根を切る使い古しのノコギリ、砕石の多い所ではツルハシ等も用意しておく
と良い。
穴掘り 金梃子による木の根の除去
7. 柱の穴の深さが充分に確保できない場合
今回も親柱の穴は、コンクリートがあり充分な深さを確保できなかった。その場合の措置
として
@ 現状の深さ合わせて柱の埋め込み部分に併せて柱を切断することが必要となる。この場合でも50cm前後は必要であろう。
A 深さが確保できない場合(下図参照)
コンクリートで柱を固定する。この場合穴は広く大きく掘る。
コンクリートは、底の部分は荒いザラザラした状況に水を調節したコンクリート。表
面は硬いくらいのコンクリートで固定する。中間は土で良い。
8. 親柱の設置
今回の柱はL字型の短い垣根であるため、間柱は存在しない。
基準の決め方は、一重垣の向かって右端の親柱を基準とし順次決める。
@ 基準柱に対して次のL字型の折れ曲がる柱、最後の柱との間の土面の高低差等を加味し、基準柱の高さを決める
A 基準柱の垂直を水準器を使って確認し少しづつ土を入れて、つき棒で突き固めながら固定する。
B 「ぬめ(無目)」を取り付ける状態をイメージし基準柱と、次のL字型の折れ曲がるところの親柱の高さを水準器を用いて決め、少しづつ土を入れ固定する。
「ぬめ」の底面が土面からゆとりがあることを確認する。
基準となる親柱の設置 親柱を「ぬめ」取付け位置で確認
9. 「ぬめ」の取り付けと下支え
9.1 「ぬめ」の取り付
@ 親柱の垂直・間隔を決める。
A「ぬめ」を予め柱に溝を切つた所に取り付け、ネジ(クギ)で固定する。
●「ぬめ」の必要性
の腐りが早くバラケル要因となっていた。これを防ぐため最近では「ぬめ」を取付
けるようになっている。
●部材の止めはネジを使用する
もともとクギを使用していたが、最近は下記理由からネジを使用する。
特に竹の元口は割れやすい。
A やり直しの際や仮止めでクギを抜く際に部材を破損しまた、抜くのが容易でない
等、やり直しが難しい。
B ネジの方が作業効率が高い。
●ハンドドリルを2台使用する
●シュロ縄は予め水に浸しておく
シュロ縄は結束の際に水を含ませておかないと、乾燥したままのシュロ縄はすべり
にくく締りが悪いため結束が難しい。そのため結束作業の大分前に水を入れたバケ
ツにシュロ縄を浸しておく。結束の前に、作業しやすいように、縄をほどき丸めて
おく。