第１章1/2

	はじめに
	この資料はシルバー人材センター植木職として１７年間の私の経験と実践に裏付けられたものです。シルバー植木職１７年間の総括として皆様の役に立つことを期待し残します。この資料はシルバー植木職だけでは無く、一般の方・事業者の方も参考になります。元資料はWORD、EXCELです。ご希望の方はメールで連絡いただければお送りいたします。
	第１章　植木の手入れ
Ⅰ.	庭とは
	①	庭を見れば住んでいる人が庭木を大事にしているかどうかが判ります。また、その家に住んでいる人が偲ばれます。庭は住んでいる方の気持ち次第です。
	②	庭木は庭全体が調和し、心が癒され、美しくありたいと思います。
	③	庭木を一見すれば手入れが素人かプロかがすぐわかります。
Ⅱ.	植木の手入れの考え方
	新しい家の庭木でまだ木が小さくこれから育てて行く場合、目標の大きさに落ち着くまでは手入れが変わります。
	1.	新しい家で庭木もこれから育てて行く場合
		①	若い庭・木では、将来どのぐらいの大きさ・風情に仕上げて行くか見極めます。
		②	自然のままに育てます。強い枝抜きなどは最小限に留め樹形を見極める必要があります。
		③	木の大きさに合わせ樹形を整え、支えを補強し、台風などに備えます。
	2.	木が大きくなり落ち着いた庭の手入れ
		①	庭とバランスした樹木は、樹形を大きくしない即ち、切り戻しが重要で原則です。
		②	切り戻しの原則が守られていない樹木はドンドンと大きくなります。ヒコバエなど払うのを見逃すとやがて、堂々として枝抜きを見逃す要因になります。
		③	庭の大きさに見合った庭木に手入れします。
	3.	放置され荒れている庭
		①	庭全体のバランスを見て思い切って不要な樹木の間引き、枝抜きを行います。
		②	枝を切る場合芽や一葉を残して切り、枯れないように注意します。
	4.	庭が美しく風情があるという事
		①	庭の大きさと樹木の大きさ・配置・樹間・見栄え・庭石・芝等がバランスしている。
		②	立枝、斜め枝、下がり枝、枯れ枝、裾元の不要枝、ひこばえ等は美観を損ないます。
		③	樹木の幹・枝が見えるように手入れするのが原則です。風通しも良く、清々しく見えます。
		④	木の個性にあった樹形を工夫すると風情が増します。
	5.	季節に合った手入れ
		①	葉が茂っている状態・夏の時期は枝抜きは難しくなります。
		②	夏場は刈り込み過ぎると枯れます。
		②	秋口以降春に芽が出る前の間は、樹木は休眠状態ですので枝抜きは樹木にとり優しい対応です。
	6.	樹木の性格・特徴・強さ・弱さを知る
		①	庭には先人の想いとかが偲ばれまた、様々な知らない木も植えられています。これに対処するには、基本を学び応用する事に尽きます。
		②	有名な公園や手入れの行き届いた庭を見て、手入れの仕方を参考にする事が大切です。
Ⅲ.	樹木の手入れ
	樹木の手入れのポイントを以下に示します。
	1.	黒松(男松)
		①	黒松は手入れが難しい松です。まず枝振りが大きくならない切り戻しが前提です。
		②	年に春と秋に2回手入れするのが理想です。松の手入れは時間がかかりお金がかかるので年に1回が多いようです。1回の場合、余分な芽摘みやもみあげも出来る秋の時期をお客様に勧めるのが良いでしょう。
		③	大きくしないためには、新芽を徒長させないことが大切です。常に下側にある勢いのある枝を大事にします。
		④	松の種類により葉の長さが色々ですが見栄えがサッパリとするように、目安として１０㎝四方に１ケ残す感じで枝抜きしますが葉の長さでバランスを考えて枝抜きします。
		⑤	春の新芽は途中で切れば必ず枯れます。秋を過ぎると丈夫な枝として成長しているので徒長しないように新芽の途中で切ります。切っても枯れません。これは重要です。
		⑥	芽を残すのは１枝に１ケが基本ですが空間を補う場合や保険の意味で２ケ残しても良いでしょう。
		⑦	芽は適当な大きさの葉を１ケ残しても良いですがどうしても大きくなります。大きな芽の根元の小さな芽を残し太い部分を切る方法は非常に有効です。その小さな芽を見分ける力を養うことが大切です。日ごろの観察が大切です。
		⑧	ハサミは果樹園で使用している先の細いハサミを使用をお勧めします。もみあげの手入れはハサミを持つ手と左手の両方を使って効率的に出来るように馴れます。
		⑨	手入れされず荒れた松などで新梢が大きく徒長しバランスを崩している場合は最初に思い切って枝抜きします。作業の手間も省け効率的な作業が可能となります。この場合お客様に、その目的や有効性を事前に説明し納得して頂く事が大切です。
		⑩	枝振りで不要なもの、バランスが悪く形を崩しているもの、幹の内側の小枝や外側に枝が徒長しているものは払います。
		⑪	形を大きく崩している枝は、「駄目なものは駄目」と思い切る心が大切で、払います。
	2.	赤松
		①	赤松も種類が色々ありますが、一般的に男松と違い新しい芽が次々と出て来るものが多いようです。この場合は、大胆に枝抜きをしてもかまいません。
		②	幹のウロコのような表皮は見苦しいので手袋で払うときれいな木肌が現れます。
	3.	五葉松
		①	松とはいえ黒松などとは全く性質が異なります。まともに枝抜きするのは工数がかかり作業が大変です。
		②	ポコポコ出ている新芽を刈り込みばさみでカマボコ型をイメージし浅く刈り込みます。
		③	その後、葉が切られて枝だけ残っているのを風通しが良い感じに枝抜きします。
	4.	ダイオウショウ
		①	大きな葉の黒松と思い大胆に枝抜きをします。
	5.	マキ
		①	お客様が松のように枝抜きを希望するかどうか確認します。まともに枝抜きすると工数は４倍位はかかります。
		②	一般的には刈り込みだけを希望する方が大部分ですが、トリーマの使用で良いか確認します。庭を楽しんでいる方には手刈りを希望する方もいます。
		③	刈り込みが強く葉が無いと枝は必ず枯れます。枝は茎と葉の一部を残すように刈り込みます。
		④	細かいゴミが多く出るので作業効率を高めるためシートを敷きます。
	6.	ツゲ
		①	ツゲは寒い地方に適しています。関東も次第に暖かくなりツゲには厳しいようです。したがってあまり強く刈り込まないようにします。刈り込みが強く葉が無く枝のみになると枯れる確率が高くなります。
		②	どの位刈り込むかイメージを決め全体をカマボコ型に刈り込みます。
		③	玉の下側にも気を配り揃えます。また、内側のヒコバエは払います。
	7.	チャボ
		①	チャボも寒い地方に適し、関東も次第に暖かくなり玉単位で少しずつ枯れるものが多くなっています。あまり強く刈り込まないようにします。
		②	大きい玉の場合は小型のトリーマ又は、短い刈り込みハサミを使い刈り込みます。
		③	小さい玉はぐらぐら動きやりにくいものです。玉全体を手で強く握り小さい形にして手から葉先を出し、手バサミで切るとグラグラせず作業が楽で効率が上がります。
		④	玉の中は枯れたゴミが多く溜まっているので、両手で良く揉み落とし風通しを良くします。
	8.	ヒバ
		①	切り戻しが前提です。
		②	新梢は強く太く伸びています。この新梢を手の平のように5・６本の小枝が残るように枝抜きし、出来るだけ先端は切らずに整えます。
		③	枝抜きの方法は、太く長い新梢を下とか上に強く引っ張り、根元が判るようにして枝抜きします。
	9.	キンモクセイ
		①	成長が良いので新芽がドンドン伸び大きくなります。切り戻しをしないとドンドン大きくなります。以前に刈り込まれた所を確認し、そこを目標に刈り込みます。
		②	大きくなり過ぎ天頂部は手が届かなくなる程大きくなっているものも見受けられますが切り戻しを適切に行わなかった事が原因です。強い木ですのでお客様が納得すれば思い切って全体を小さくすることも出来ます。
		③	枝振りを良く見て不要な枝が太く徒長しているものが無いか見極めます。そのような枝は最初に思い切り払います。これで作業効率も上がります。
		④	毎年丁寧に手入れされ枝抜きも適格に確り行われているものは、枝先も細くきれいに整っていて、トリーマでも刈り込みハサミでも作業は楽できれいに仕上がります。全ての樹木に共通する事ですがこのように将来を見据え枝抜きを行います。
		⑤	葉先の残し方はドーナッツのように外側を２０センチ程度の葉・小枝を残すようにし、外側から見て葉が無い切り枝で不要なものは払います。外側の形を整え又、外から枝振りが見えるように整えます。同心円の内側のヒコバエ等は全て払います。
	10.	ウメ
		①	強い木です。新梢もドンドン大きくなります。梅は年に３回手入れするとも言われています。
		②	切り戻しと枝抜きを意識した手入れを行わないと、徒長が大きくなり枝もドンドン増え混むことになります。大きい梅では外側からは手が届かず中に入って登る事も出来なくなります。
		③	このような場合は、残す枝と(玉)と大きさの目標を決め思い切って作り直します。中途半端に葉の部分などを残すと、その部分に精力が集中し、切り直した枝は枯れるので注意します。
		④	強く切り戻した所から３ツ位の枝で玉を作る感じを意識し数年かけて整えるようにします。
		⑤	玉の枝で太い枝が途中で切られ残されているのを見かけますがいけません。来年はその太く切られた所から沢山の芽が出て、玉の中に新しい玉が出来る元となり良くありません。
		⑥	玉は３ッくらいに中枝を作りその先から小枝で仕立て全体として玉にします。毎年の切り戻しはこの小枝を刈り込むようにします。
		⑦	ヒコバエは全て払います。
	11.	ロウバイ
		①	新梢の育ちが良く形を取りにくい、やっかいな木です。新梢を適度に払い、無理やり形を整えます。
	12.	モッコク
		①	庭木に適していますが暑さには弱いようです。
		②	新梢のピョンピョン飛び出している所をカマボコ型をイメージし薄く刈り込みます。その後葉の無い切り枝は枝抜きします。
	13.	モチ
		①	玉造りが殆どですが、新梢が強く伸びた太い枝の枝抜きを行った後、トリーマ又は刈り込みハサミで刈り込みます。
		②	玉の太い切り枝は根元から枝抜きを行います。太い枝を残せばそこから新しい芽がドンドン出てきます。小枝だけで玉を作るようにすれば刈り込みハサミで楽にかつ、きれいに仕上がり作業も楽になります。
		③	葉や枝が黒ベト病や貝殻虫で侵されている場合は思い切って枝の中ほどから切り落とし再生を図ります。強い木ですので丸坊主になっても大丈夫です。お客様には事前に良く説明しておく事が必要です。
	14.	サツキ
		①	サツキは葉が小さいです。強い木ですので日当たりが良く水やりを忘れなければドンドン成長します。
		②	強い木ですから花が終えた後であれば、どのようにでも刈り込む事が出来ます。例えば玉の大きさを半分にすることも出来ます。花の咲く前であればどの程度花を咲かせるかお客様の要望次第で花が残る状態をイメージし刈り込む強さを加減します。
	15.	ツツジ
		①	サツキと異なり葉は大きく毛があり枝振りが太く全体に大きくなります。強い木です。
		②	したがって庭とのバランスでどの程度に大きさにするかを考えて刈り込みます。丸坊主にする場合はお客様に説明しておくことが大切です。
		③	今迄の手入れでヒコバエの枝抜きが適切に行われていない場合はどんどん太くなり太い枝で混んだ状態になっています。そのような場合は思い切ってバランスを崩している枝は根元から切り払います。
		④	根元のヒコバエは③の原因になるので丁寧に払います。
	16.	ミツバツツジ、ウメモドキ
		①	基本的に刈り込みや剪定はしません。樹形を生かし自然のままにします。切る場合は枝分かれしている所で切ります。ミツバツツジはお客様によっては大切にしている場合があり注意します。
	17.	ドウダンツツジ
		①	秋には真っ赤な葉が楽しめまたスズランのような小さな花が一杯に咲くので楽しめる木です。
		②	強い木ですので切り戻します。切り戻さないとドンドン大きくなります。
	18.	ヤマモモ
		①	樹形は大きく育てます。最初に全体を見て不要な太い枝抜きを行います。荒れている場合は、枝や葉が茂り登りにくくなっています。この場合は下の方から枝抜きをしながら作業を進め、抜いた枝や葉が下に落ちるようにします。
		②	葉の部分は玉を意識し全体としてパラット見え、風通しが良く、薄めに仕上げます。葉の部分はキンモクセイと同じ考え方でまとめ同心円の内側の小枝、ヒコバエは全て払います。
		③	バランスを崩している枝は元で払いますが先を見て途中で切り新たに枝を作り直す場合もあります。
	19.	カシ・クス
		①	１年たつとドンドン大きくなり丈夫な木です。カシは筒型、クスはカサ型に仕上げます。
		②	枝先は玉造りのイメージで５本程度の小枝でまとめるようにするのか理想です。太い枝を切り残してはいけません。残す場合は将来枝を伸ばして大きくしたい場合だけです。
		③	クスは折れやすいので注意が必要です。